小児医療を守るために
― 子どもの命と成長を支える社会基盤を、次の世代へ ―
日本小児科医連盟委員長 佐藤 好範
日本小児科医連盟の皆様には、日々、子どもたちの診療と健康支援にご尽力いただき、心より敬意を表します。2026年度、小児医療は大きな危機に直面しています。少子化が進む一方、救急、予防接種、健診、発達支援、こころのケアなど、現場に求められる役割は増えています。しかし、小児科診療所と病院小児科の経営は急速に悪化し、地域の医療体制が維持できなくなるおそれがあります。
小児医療を取り巻く2026年の現実
2025年の日本人の出生数は67万1,236人、合計特殊出生率は1.14で、いずれも過去最低となりました。子どもの数が減っても、小児医療の必要性は変わりません。むしろ、一人ひとりの命と成長を確実に守る体制が、これまで以上に重要です。
地域の入口を担う小児科診療所の窮状
小児科診療所は、日常の診療に加え、予防接種、健康診査、慢性疾患、発達・子育て相談、学校や行政との連携を担っています。しかし、患者数が減る一方で、人件費、医療材料費、光熱費などは上昇しています。診療報酬で十分に評価されない業務も多く、経営は限界に近づいています。閉院する医療機関が増えれば、子どもと保護者が身近に相談できる場所が失われます。
地域の最後の砦である病院小児科の危機
病院小児科は、24時間の救急・入院、新生児・重症児医療、周産期医療、専門診療を支える「最後の砦」です。常に人員と設備を確保する必要があるため、採算を取りにくい部門です。病院全体の赤字が広がるなか、小児病床や当直体制の縮小、診療科の撤退が現実のものとなっています。一つの病院小児科が縮小すれば、周辺の医療機関に負担が集中し、救急搬送や入院の受入れにも支障が生じます。
令和8年度診療報酬改定後も残る課題
令和8年度診療報酬改定では、小児・周産期医療や物価・賃金への対応が示されました。しかし、現場の負担を十分に補えるかは不透明です。診療報酬だけでなく、国と自治体による安定した財政支援が必要です。
小児医療は、将来への投資であり不可欠な社会基盤である
小児医療は、子どもを健康に育てるために欠かせない社会基盤です。病気の治療だけでなく、予防、発達支援、虐待の早期発見、家族への支援まで担っています。小児医療への支出はコストではなく、日本の未来への投資です。
2026年度に求める政策
国と自治体に、次の対策を求めます。
・物価と賃金の上昇を反映した診療報酬と財政支援
・診療所が担う予防、健診、相談、地域連携への適正な評価
・病院小児科の救急、入院、周産期、重症児医療への安定した支援
・医療従事者の確保、処遇改善、地域偏在と後継者不足への対策
・医療機関が縮小・撤退する前に支援できる仕組みの整備
政治に届けなければ、医療は守れない
小児医療を守るには、現場の実情を政治と行政に具体的に伝え、予算、診療報酬、人材政策に反映させる必要があります。党派を超えて小児医療の重要性を共有し、実効性のある政策につなげなければなりません。
結びに
子どもは、自ら医療の必要性を政治に訴えることができません。だからこそ、私たちが子どもたちの代弁者となる必要があります。小児科診療所と病院小児科の崩壊を防ぎ、持続可能な小児医療体制を築くため、地域の実情を発信し、政治と行政に行動を求め続けましょう。小児医療を守ることは、子どもの命と日本の未来を守ることです。